競い合う鶏鳴
独立した図を貼る押絵貼屏風の形式をとり、鶏のさまざまな姿態を楽しめるよう構成されている。
濃墨による尾羽は宙を舞うように幾重にも弧を描く。また早い筆さばきで各様の羽を描き分ける。鶏のポーズも上向きや正面向き、さらに静動を取り合わせている。背景を一切描かず、墨の濃淡とユーモラスな表情は躍動感に富んでいる。
署名には「米斗翁八十二歳画」とある。文字通りとすれば寛政九年(一七九七)の作となるが、若冲は還暦以降、改元の度に一歳加算したという説が近年支持されている。本図も実際には一、二年遡る年の制作かもしれない。